大悲山修験ものがたり

  • 1.自然を敬い、自らを見つめる修験道 1.自然を敬い、自らを見つめる修験道

春に山から下りてきて田を見守り、秋には山に帰るという田の神信仰にも見られる通り、山は古来より神様の住むところとされ、更には山そのものを神様とする信仰もありました。

この山岳信仰に仏教の行脚や道教の入山修行が絡み、密教や陰陽道と習合して、飛鳥時代に役小角(えんのおづぬ)が完成させたと言われる宗教が「修験道」です。

【修験】の語源は「修行して迷いを除き、験徳をあらわす」。

行動し体験する中で以心伝心のうちに本来の悟りを開く道でありました。

   

さて、いつからか修験道の修行者は、山に伏して修行する者という意味で「山伏」と呼ばれるようになります。

元々は密教を修める必要があった山伏ですが、時代を下るうちに武士、商人、農民出身の修行者が増え、明治の初めには全国で17~18万人にも膨れ上がっていたと言います。

明治5年の修験禁止令により、その数は公式にはゼロとなり信仰も文化も大きく衰退しましたが、山岳修行の指導者は細々と存続し、戦後、山伏修行の体験が出来るお寺や団体が増え、改めて修験道が一般市民に近い存在になってきました。

そして今。

生活はどんどん便利になってはいますが、モノが過剰な程に溢れ、人それぞれ様々な生きづらさを抱え、また過去考えられなかった規模の自然災害が次々と起こる時代だからこそ、「自然を敬い、自らを見つめる」という修験道に横たわる基本の考え方が改めて見直されるべき時に来ていると言えるのではないでしょうか。

本格的な修行ではありませんが、少しでも修験道の世界に触れることで自然への感謝を強くし、自らを静かに見つめ直す体験は、より良い人生のひとつの糧になるはず。
是非、修験道に縁有るこの地で、自己との対話の時間をじっくりと味わってみてください。

   

(「霊山として大悲山」につづく)

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